HSF1は日周温度変動に対する細胞の耐性に必要である
HSF1 is required for cellular adaptation to daily temperature fluctuations.
R. Takii1, M. Fujimoto1, A. Pandey1, K. Jaiswal1, L. Shearwin-Whyatt2, F. Grutzner2, and A. Nakai1
1Yamaguchi University School of Medicine, Japan
2The University of Adelaide, Adelaide, South Australia 5005, Australia
Scientific Reports 14, 21361, 2024. DOI: 10.1038/s41598-024-72415-x.
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-024-72415-x
ヒトの細胞ではHSF1のみがHSP70誘導活性を担い、変温動物であるカエルやトカゲの細胞ではHSF1とHSF3が共に強いHSP70誘導活性を持つことが分かっていた。本研究で、恒温動物である鳥類においては少なくともHSF1あるいはHSF3のどちらかが強いHSP70誘導活性を持つ一方で、体温調節の能力の低い(変温動物にやや類似する)哺乳動物の単孔類(カノモハシ、ハリモグラ)(オーストラリア、アデレード大学との共同研究)では、HSF1とHSF3は共に強いHSP70誘導活性を持つことが明らかとなった。以上の知見は、HSF1とHSF3の機能は体温調節能力と関連するこという仮説を支持する。
そこで恒温動物細胞において、温度の日周変動に対する細胞の耐性にHSF1とHSF3が重要な役割を担うかどうかを調べた。そのために、ヒト正常繊維芽細胞(OUMS-36T)を日周温度変動に14日曝し、細胞増殖とコロニー形成能を調べた。その結果、HSFKO細胞は、顕著に細胞増殖と生存(コロニー形成能)が低下した。興味深いことに、その細胞にHSF1を再発現すると表現型は改善したが、HSF3の高発現は改善しなかった。そこで遺伝子発現を解析することで、日周温度変動に関与することが推測される遺伝子群を同定した。その中でも、脂質代謝に関連するG0S2の高発現によって表現型が一部改善することも分かった。以上の結果から、HSF1は日周温度変動に対する細胞の耐性に必要であると結論づけた。